本機には、リズム・マシン&ベース・マシン機能も搭載されていて、8種類のドラム・キット、5種類のベース音源から選んで使うことができます。パネル左のタッチ・センス付きパッドをたたいて、ニュアンスのあるオリジナル・リズム・パターンの打ち込みが可能です(ステップ入力にも対応)。また、475種類のプリセット・リズム・パターンも用意されているので、大まかなリズム・ガイドが欲しいデモ制作時などに便利です。さらに内蔵エフェクトも充実しています。インサートとセンド/リターンの2系統が同時使用可能で、インサートは94タイプを搭載。ギター/ベース・アンプやマイク・プリアンプをモデリングしたプログラムもあり、録音の段階で音作りに困ることはなさそうです。僕はエレキギターで試してみたのですが、エグめな音、飛び道具的な音も作ることができて結構遊べました。アンプ・モデリングではピッキングのニュアンスもちゃんと出せるし、ライン直でも十分な感じです。センド/リターンにはリバーブ、コーラス、ディレイなど6タイプが用意されていて、全体の空気感を調節できます。さらにロー/ミッド/ハイの3バンドの帯域別にかけられるマルチバンド・コンプなどのマスタリング用エフェクトも搭載されているので、デモ制作だけでなく、これ1台で作品をきちんと仕上げることも可能です。僕はマルチバンド・コンプをいろいろいじって立体的な変化を楽しむのが好きなので、このエフェクトの搭載はうれしいですね。そして何気ない部分ですが、チューナー内蔵も便利な点です。いちいちシールド・ケーブルを抜き挿ししないでワン・タッチでチューニングが行えるのは本当に便利。バンドマンには“デモを録るのにいちいちチューニングを合わせるなんて面倒”という無精者が結構多いと思います。そういう人たち(僕も含め)にはありがたい機能です。そのほか、ZOOMのWebサイトからフリーでダウンロードできるMRS-8 Card Manager for Windowsというソフトを使って、本体のオーディオ・データをWAV/AIFF形式でパソコンとやり取りすることもできます。物理的なやり取りは、カード・リーダーをパソコンに接続してSDカード経由で行うのですが、これを使えば、例えばリハスタでMRS-8で録ったテイクを、自宅のパソコンのDAWソフト上にコンバートして編集するといった作業ができるわけです。自宅のデスクトップ・パソコンにDAWソフトをインストールしたはいいけど、バンドの音、特にドラムはスタジオじゃなきゃ録れないし……と悩んでいる人に便利な機能ですね。MRS-8の機動力を生かした使用法だと思います。以上、駆け足で機能を見てきましたが、この小ささ&軽さでこの機能、そしてこの価格にはちょっと驚きました。バンドが必要とするレコーディングのすべてのシーンに対応可能という印象です。録音機材を気軽に持ち運べるのは素晴らしいことですね。個人的にはリハスタでジャムっているときに、全体の音をこれで録っておきたいです。ウチのバンドはジャムりながら曲を作っていくことが多いんですけど、これで録っておけば自宅に帰ってからもいろんなアイディアを試せるので。うーん、欲しくなりました。